
佐倉市志津駅から徒歩3分、閑静な住宅地の中に一風変わった駄菓子屋さんがあると話を聞き訪れてみた。例によって、ネタ元は船橋市地方卸売市場の駄菓子問屋「現金問屋やました」の社長だ。
まず、「こんなところに駄菓子屋なんてあるのか??」と、頭をひねってしまうような場所にある事に驚かされる。そして、その駄菓子屋が開店している場所に驚き、発見したと同時に「おぉ!!」と感嘆のため息を漏らすこと間違いない。なんと、住宅の1階、車庫になっている高さ180センチのガレージスペースに駄菓子屋が開店しているのだ!
秘密基地のような空間
幸い僕は背が低かったので問題なく店内に入る事が出来、むしろ快適な秘密基地を堪能するような気持ちで店に入ったが、昨今の若者は180センチを超えるので、今どきのお父さんや、かつて子どもだった中学生&高校生は腰が痛くなるかもしれない。
しかし、この狭さ、窮屈さ。そして、ガレージの壁そのままの無機質なコンクリートが男心を誘う。
きっと、小学生たちもこのたたずまいには大満足に違いない。
店内は車2台分の車庫スペースを活用。
「もともとの車庫のままなので車止めもあるんです。だから配置が変な感じなんですけどね」と、人のよさそうな笑顔で話してくれる店主の小山明子さん。

「コロナ対策で入口も開放し換気しているし、空気清浄機もフル稼働させています。コロナの前は子ども達がたくさんやってきて、上志津小学校のこの辺の班の子たちが色んな学年で仲良くなって遊んでくれていたんですけどね…」
「最近は、ちょっと込み合ってくると子ども達の方が『僕、公園に行くからいいよ~』って自分たちで気を使ってくれるんです。早くコロナが収束してほしいです」僕も、子ども達の胸中を思って心からうなずく。
入口には、もはや当然のように…感染症対策で消毒が置かれ、検温できるように非接触の体温計も用意されている。感染症対策もバッチリだ。

店内には常時170~180種類の駄菓子が並べられている、選ぶのも一苦労だ。
中には、「あれこんなのあるんだ僕も初めて見た」という商品があり、取材の写真を撮っているつもりでも気が付くと後で購入する商品選びに夢中になってしまう。
「ちなみに…なんでここで駄菓子屋を始めることになったんですか??」
ここで駄菓子屋をはじめるようになったきっかけ
「もともとは志津のマンションに住んでいたんです。でも、縁あってこの家を購入することができたんですよね。それから間もなくして、夜に女の子が一人で歩いているのを見かけるようになって…」
「お母さんもお父さんもまだ帰ってきていなくって…」
「こういう子たちが安心して遊びに来られる場所を作れないかな…ってその時に感じたんです。それから、このガレージでイベントやって、彼女にも手伝ってもらって…その後、彼女のお父さんが内装のお仕事しているってことでガレージの内装を手伝ってくれて、オープンする事が出来たんです」
2018年5月のオープンから間もなく3年になるという「鳩♡頭巾」。当時、このお店開店のきっかけになった女の子はいま中学校2年生になっているという。
「『寄ってって、駄菓子食べる??』」って呼びかけても、『うん…いまダイエットしているから』って。子ども達が駄菓子屋さんに来る年齢って本当に短いんですよね」と小山さんは少しだけさみしそう…

そんな会話をしている間にもひっきりなしにお客さんがやってくる。
「昨日は天気が良くなかったから、今日は結構たくさん来てくれてます。いつも暇なんですよ~」
といいながらとても楽しそうに接客する。
街のハブとしての機能
「あっ、このガチャガチャ買ってくれたの君が初めてなんだよ~うれしい!」
「あっ、このライト不気味に光るんです!って、もう光らせてますね!!使い方わかりました??」
小山さんと今日初めて来店したらしい来店客との会話が弾む。

「鳩おばさんってどなたですか??インスタ見てきたんですよ~。あのらーめん屋さん行ってきましたよ~」
「あっ、私です(小山さん)。らぁめんのひろりんさん!行かれたんですね!!何食べたんですか??」
「鳩おばさん、って年齢じゃないじゃな~い。この間『鶏ストレート』から食べてたでしょ、あたし調べたら『元祖』から食べなきゃいけないみたいよ」
女性同士の会話は高度だ。
一つの会話の間にいくつものネタが挟み込まれていて高校球児のキャッチボールみたいに剛速球の投げ合いだ。会話に入れそうにない僕はこの間に、店内を見て回ろうと心に決めた。





空き箱のロボと駄菓子レシピ

「あの…このロボは??」
「あっ、それ空き箱で作ったロボなんです」
(見たらわかるけど…でも、こういうの好き)
「空き箱かわいいしたくさんあるから。なんかもったいなくって。この間作ったんですよ。いまゴールドチョコレートってお菓子の空き箱集めてるんです。子ども達にもらって。それで金色のロボット作ろうと思っているんですよ!!」
なるほど。
金色のロボといえば、僕らの世代だと「DXゴールドライタン」のイメージが頭に浮かんだ。
「ゴールドライタンですね!」
「えっ!?そんなのあるんですか??」
(あとで写真を送っておこう…)

「この駄菓子屋DEうま!レシピって、すごいですよね。山下さんで情報伺ったんですけど」
「昔、食品会社で働いていたことがあってその時に自社商品のアレンジレシピを作っていたんです。その時の経験活かしてインスタにあげていたんですよ~」
「コロナで緊急事態宣言になった時にお店閉めなきゃいけなくなってしまって…その時に駄菓子悪くなっちゃうし配るわけにもいかない状況だったじゃないですか。それで、じゃあ、これでアレンジレシピ作っちゃえってインスタに載せ始めたんですよ。とりあえず、100種類作!って気合い入れて」
「100種類も!すごいですね!!」
おなじみの駄菓子を使ったレシピの数々に思わず目を奪われる。
「梅ジャムを使ったポテトサラダってすごいですね」
「駄菓子はもともとそれ自体が完成されたおいしいものなので、意外となんにでも合うんですよ~梅ジャムとマヨネーズなんて最高の相性ですよ。駄菓子屋さんなんで一つひとつが安価だから単価上げるのもですけど、親子で買い物に来てくれてレシピ考えたりしてもらったりしたら楽しいなって」
確かに、駄菓子を使った料理だったら子ども達も楽しめそうだ。
「緊急事態宣言明けて、インスタ見て知ったってお客さんが増えたんです。やっぱり発信って大切だなって感じました」


「ポッポー、ポッポー、ポッポー」
丁度3時になったので鳩時計が鳴いた。店名が「鳩♡頭巾」だけあって細部にわたる演出にこだわりを感じる。駄菓子屋さんはこうでなきゃならない。
収集癖のある小山さん、趣味と実益を兼ねて
「あれ?なめ猫」







「私収集癖があるんですよ~自分でも駄菓子の景品とか集めていて」
店内には至る所に小山さんの私物が展示されている。
「昔っから駄菓子が好きだったんですよね~」
実に楽しそうな笑顔を見せてくれる。
小学校低学年くらいのお子さんを連れた紳士がやってきて親しそうに小山さんと話している。
話を聞くと、中学校の時の恩師だそうだ。
「●●君のこと覚えているか?ほら、あのバスケ部の…」
「先生よくそんな昔のこと覚えていますね!さすがですね」
うん、地域の中に溶け込んでいる駄菓子屋さんって感じだ。
この場所に来て、志津周辺の情報を小山さんから聞き、他のお店を辿って行ってそこからまた別のお店を紹介してもらう。そんな、小山さんは志津駅南口商店街の広報担当としても活躍しているという。きっと、商店会の魅力をSNSなどを使って拡散してくれるんだろうなぁとたくさんの駄菓子を子どものお土産に購入して店を後にした。



駄菓子屋 鳩♡頭巾(はとずきん)

店名:駄菓子屋鳩♡頭巾
住所:京成線志津駅南口より徒歩3分 ※自宅なので非公開
TEL:090-6165-8894
営業日:毎週土曜日、日曜日、月曜日。祝日。
営業時間:土曜日14時〜17時、日曜日14時〜17時、月曜日15時〜17時、祝日14時〜17時
SNSなど
HP:https://keroom.amebaownd.com
blog:https://ameblo.jp/3biki-kuma/
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