11/11(日)小さなお店のシェアキッチン経済学
実際にシェアキッチンをやってみてその感想と次への取り組み

こんにちは、船橋市場の中で小さなカフェスペースを経営しているマスターの山﨑(やまさき)です。
以前から何回か書かせていただいている「シェアキッチン」。11月10日と11日の2日間で開催してみました。
実際、10日は船橋市場の「市民感謝デー」というイベント、11日は「農水産祭」という市場の開催している集客イベントの日なので「普通の日のシェアキッチン効果測定」はできないと思いますが、色々と気付きがあったのでその辺を書かせて頂きます。
お店を経営するうえで最も大きなウエートを占めるのは、「人件費」。その次に「家賃・改装費」、仕入れなどの「原価」だと思われます。それ以外の経費は、町会や自治会の会費とか、仕入れに使うガソリン代くらいかな…
このほかには電話などの通信費は、LINE電話やSkypeなど通信アプリの普及でだいぶ軽減されたかと思います。そうはいっても、広告宣伝費を今でも多く使っているというお店さんもあるかも知れません。
この点もFACEBOKやLINE@などの各種SNSサービスを使う事でかなり軽減することができると思います。「食べログ」「ぐるなび」「ホットペッパー」などに出稿する飲食店さんってまだたくさんいらっしゃいますよね。
仕入の価格も相見積もりや産地との取引などによる仕入れルートの見直し、価格交渉などで多少変えていくことが可能です。家賃も店を出店する際に見合った相場で借りられているか、集客にはどう影響しそうかなどを検討余地があります。
改装費用は?こちらも自分で手を入れていくことがかなりの金額を下げることができるでしょう。
人件費だけは、「最低賃金」があるために交渉の余地がありません。売上が上がっても、上がらなくっても必然的に時給●●●円(千葉県の最低賃金だと平成30年11月11日現在で895円)を支払わなければならない…しかも、思ったように働いてくれなかった場合には、最悪の状況が待っています。
経営者側からは簡単に解雇できませんが、従業員側が「明日で辞めます」というのは簡単です。もっとひどい場合には「朝出勤時間になっても来ない」という選択肢も労働側は選ぶことができます…非常に残念なことですが、とっても不平等なんです「雇用契約」って。
こうした事実を踏まえて、小さなお店を守っていくために市場カフェで実践してみたのが「シェアキッチン」です。
飲食店を本気でやっている人だったら、自分の厨房に人を入れるなんて絶対に許せないことかも知れません。今回の施策はあくまで自分のお店を守るための一つの知識だと捉えて頂きたいのです。
話は戻って…
市場カフェの状況は正に、人件費割合と急な退職で「にっちもさっちもいかない状況」まで落ち込んだので選択の余地はありませんでした。以下の表は、雇用に対する損益分岐点から見た必要売上の金額です。
こうしてみると、バイトと社員を併用する場合は、市場カフェみたいな小さな店でも最低100万円近くの売上が必要になるのです。それでも利益は、3万円でるくらい。もちろん、ここにカウンターに立つ僕の人件費や奥さんの人件費は含まれていません。
バイトのみのシフトで回した場合は、60万円位が損益分岐点、シェアキッチンは固定人件費がかからないので25万円、ほぼ「場」を作るためのお金だけで賄えてしまうのです。
これは、何もシェアキッチンだけでなく「シェアスペース」「場所貸し」でも同じこと。現在の経済の中に「シェアリング」という概念が必須になってきているのは、売上が頭打ちになってしまって人件費をねん出できない企業が増えてきているからなのかも知れません。
こうしたことからも地方創生とか地方の活性化という課題解決には「シェアリング」は欠かせないのではないかと考えています。
これまでの時代では、シェアの概念を発信し、定着させるためには「広告費」が莫大にかかりました。「口コミ」を意識的に広める方法はなかなか難しかったのが現実ですが、現代にはSNSがあります。無料で広告でき、口コミに近い効果をもたらしてくれます。
小規模な経営をしている分にはSNSは非常に有効な広告ツールだと思います。
シェアキッチンの大いなる課題

今回の本題ですが、シェアキッチンで課題になるであろうことは、基本的にカフェの運営スキルを持っている人がシェアキッチンに来ることはないので、「場所代」を売り上げからねん出するのが難しい事です。
今回の2日間で「シェアキッチン」は、「体験キッチン」とか「チャレンジキッチン」として発信していった方がよさそうだなという実感を得ました。飲食店を持っている人の多くが抱える課題「集客」。ここが成功している経営者は、人の悩み以外にそんなに課題を抱えないんじゃないかというくらいに「集客」は苦労します。
暇な時間帯に鬱になりそうなくらいに後ろ向きな気持ちになりながらカウンターに立っている経験をした飲食経営者はたくさんいる事だと思います。
僕は、初めて市場カフェを経営した時にそうでした。
シェアキッチンをやる場合、集客の方法や、カフェとはいえドリンクだけでなくフードメニューの開発、売上単価の向上に向けた提案、食材ロスの削減、提供価格を考えた食材原価などの各種努力を共有していきながら「二人三脚で進んでいく必要があるんだな」という実感を感じました。
それでも、自分の店を出すために、もしくは自分がつくったものを提供したいという前向きな人との仕事はとても楽しくって、今回のシェアキッチンって本当にいい経験だったなぁと感じます。
また別の角度から課題をあげると、シェアリングや場所貸しをしてほしいというニーズがその地域にどのくらいあるか。これには顕在的なニーズと、潜在的なニーズの両方があります。
「自分でお店やってみたい!でも不安なんだよね」というニーズの人って実は少なくって、「いつかはお店でも持てたらいいなぁ…でも自分の料理を人に出してお金もらうのって自信がないから」という感じのニーズの方がはるかに多いのです。この潜在的なニーズをどうやって拾い出して、実際にカウンターに立ってもらうかというのがもう一つの大きな課題かなぁと感じました。